「来年の事を言うと鬼が笑う」。英語でも同じ意味合いの言葉がある「Fools set far trysts」(愚か者は遠い先の会合を約束する)。ニュアンスとしては、相手を嘲笑するような類の言葉だ。しかし、普段の生活において、来年どころか遠い先の未来まで予定が組まれていることは珍しくない。例えば、オリンピックの次期開催予定地やリニア新幹線の建設予定、地球温暖化問題、宇宙開発。もっと身近なもので言えば、保険なんかは未来に起こるかもしれない事に対する保証だ。技術や社会自体が目まぐるしく変化する様に、言葉自体も変化していく。こうした言葉もいずれは死語となって消えてゆくのかもしれない。
◆2015年9月の国連サミットにおいて加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」略してSDGs。国連加盟の193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた17の国際目標である。内容は、貧困や飢餓、健康や教育、エネルギー問題や経済、気候変動や環境と非常に幅広い分野に渡っている。17の目標は更に細分化され、169のターゲット、232の指標に分けられ各国がどの程度これらの指標をクリアしているかをスコア化してSDGs達成度ランキングというものが毎年発表されている。
◆「Sustainable Development Report 2021」によると、2021年の日本の順位は、18位。2017年の11位が最高順位で15~18位が日本の定位置となっている。TOP3は、フィンランド、スウェーデン、デンマーク。TOP10を見ても全て欧州の国々が占めている。このレポートによると、日本は「NO.4 質の高い教育」「NO.9 産業と技術革新」「NO.16 平和と公正」は、達成に近い所にあると評価されており、逆に「NO.5 ジェンダー平等」「NO.13 気候変動」「NO.14 海の豊かさ」「NO.15 陸の豊かさ」といった点が最大の課題と評価されている。
◆弊社においても、2021年3月に遅ればせながらSDGsへの取組を開始し、その内容を公式ホームページ上に公開している。これらの活動が国連で掲げた232の指標に直結する活動では無いかもしれないが、当社として出来る範囲の中で社会貢献につながる活動として次の事を実施していく。「ペットボトルキャップを回収し、ポリオワクチンと交換」「社内の電灯を全てLEDに交換することでCO2の削減」。製造業として「使い捨ての製品ではなく、継続して使用できるよう全てを修理可能な製品へ」。労働環境においては、製造業では珍しく女性比率の高い会社であるため「出産や子育て等によって不利益を被ること無く、女性が安心して働くことができる職場環境の整備」等など、現在7つの活動を行っている。
◆ SDGsは、2030年という期限が設けられている。掲げた目標がすぐに達成できる訳ではない。ゴールを見ながらも、日々の積み重ねが大事だ。それは、有害鳥獣への対策も同じで、今、目の前で起こっている被害に慌てて対策をして、動物を捕獲できたとしてもそれで解決にはならない。もっと包括的で計画的な活動が必要だ。SDGsみたいに全世界とまではいかないまでも、市町村や国レベルが一枚岩となって対策しなければ害獣問題の根本的な解決には至らない。「来年の事を言うと鬼が笑う」我々はまだこの言葉の呪縛から逃れられていないかもしれない。逆に『未来の事を言うと賞賛されるような言葉』が一般化するぐらいになれば、未来は加速度的に良くなるかもしれない。言葉の進化は、そういう意味ではあながち悪いことでもなさそうだ。
(こうじ)